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2015年3月26日 (木)

重力と無重力と一般相対性理論

原宣一氏は、重力は力ではないことを氏のブログ

http://www7b.biglobe.ne.jp/~pasadena/blog1gravity/blog1.htm

で主張されています。また万有引力やクーロン力などの遠隔力についても力と定義するのには疑問があることを「力と相互作用」

http://www7b.biglobe.ne.jp/~pasadena/blog/chikaratoso.htm

で主張されています。私自身も、氏のブログを拝見して、重力が力でないことが理解できましたが、これを一般に説明するには、どうしたらよいかを考えてみました。

 

まずは質点で、重力場における力のかかり方を考えます。

Photo

上の図は地上に置かれた質点にかかる力と、自由落下しているエレベータの中で見た質点にかかる力の釣り合いの図です。

 

地上では、重力による力に対して、地上からの抗力によって質点は釣り合いの状態になり、地上では静止して見えます。

 

一方自由落下しているエレベータの中では質点は静止して見え、無重力の状態が現れます。これは質点にかかる重力と慣性力が釣り合っていることで、釣り合いの状態が保たれているわけです。慣性力とは、電車やバスが発車するときに、進行方向と反対方向に受ける力で、加速度と反対方向に加速度に質量をかけた量の力です。

 

力の釣り合いからは、どちらも区別が出来ません。

 

また、質点の場合、無重力空間で床に置かれた質点に重力と同じ力を加えた場合でも、その力と抗力とで釣り合うので、やはり無重力の場合とも重力の場合とも区別がつきません。

 

この力の釣り合いは、宇宙ステーション内の無重力状態でも同様で、いわゆる重力と遠心力の釣り合いです。一方で、紐でつないだ箱を回転させ、紐の張力が重力と等しくなった時、中の物体には、遠心力で重力と同じ力が働き、箱の壁に押し付けられます。このとき壁からの抗力との釣り合いによって、箱の中で静止します。この力の関係も重力の場合と区別はつきません。

 

しかし、人間にとっては、無重力状態の釣り合いと、抗力による釣り合いの違いは区別が出来ます。すなわち、質点で考えた場合は、区別がつかなくても、大きさのある物体の場合は区別がつくはずなのです。

 

質点を非常に柔らかい球体で置き換えたとします。

Photo_2

上の図は、柔らかい球体を地上に置いた場合と自由落下しているエレベータ内(すなわち無重力)の状況を示しています。どちらも釣り合いの状態で、地上では重力と抗力が釣り合い、自由落下しているエレベータの中では、重力と慣性力が釣り合っています。

 

この二つの状態で異なる点は、地上に置かれた柔らかい球体は重力の影響で扁平になっていますが、自由落下しているエレベータ内の球体は扁平になりません。どちらも重力が働いており、釣り合いの状況も同じなのに球体の状態は異なるのです。

 

地上に置かれた状況は、無重力状態で、床に置かれた球体に上から力を加えることで得ることが出来ます。このときでも、力の釣り合いの関係は、自由落下の無重力状態と同じです。すなわち、球体は変形しているかどうかだけの違いです。

 

同様のことは、地球の周りを公転している宇宙船内の無重力状態は遠心力と重力の釣り合いなのかどうか。柔らかい球体は無重力空間では変形しませんが、柔らかい球体に紐を付けて振り回せば、球体は遠心力で細長く伸びて、回転楕円体になります。これは、力の関係は無重力と同じなのに、状況は全く異なるのです。

 

こうして考えると、無重力状態で、本当に重力が働いているかどうか、疑わしくなってきます。さらに、慣性力というのは力として定義して良いかどうかも疑わしくなってきます。

 

無重力状態では、むしろ重力は消えてしまったと仮定した方が良いのかもしれません。

 

ここで、一般相対性理論で、重力をどう考えるか、アインシュタインがAnnalen der Physik [4] 35 (1911) 898-908に発表した一般相対性理論に関する最初の論文(この論文の前に電気学会?の年報、Jahrb. f. Radioakt. u. Elektronik IVに太陽の近くを通る光が、太陽の重力場で曲がることに関する論文を出しているらしい)Ueber den Einfluss der Schwerkraft auf die Ausbreitung des Lichtes(光の伝搬における重力の影響について)を見てみると、重力をどう考えるかのヒントがありそうです。

 

特殊相対性理論では、お互いに等速運動している座標系の間で、光の速度は一定として導き出されたものですが、一般相対性理論では座標系が加速度を持っている場合になっています。

たとえば、宇宙空間で重力の加速度に等しい等加速度運動をしている箱の中から、箱の外で静止している物体を見ると、その物体は、丁度反対方向に加速度運動しているように見えるはずです。

箱の中で見ている人には、加速度と反対方向に慣性力が働き、あたかも重力が働いているように感じられるはずですので、箱の外の静止している物体は、重力の加速度で落ちているように見えるのです。

しかし、箱の外では、その物体は静止しており、箱は重力の加速度と等しい加速度で進行しているのです。しかもその空間は無重力です。ですから、静止している物体には力は働いていません。

 

このことは、座標系の取り方によって、重力が発生したり消えたりしていることを示しています。したがって、重力は力と定義するのは正しいかどうか、疑わしくなるのです。

 

原宣一氏が言われるように、物体間の相互作用による加速度と定義した方が良いかもしれません。

 

ところで、アインシュタインの上の論文は、アインシュタインの一般相対性理論の論文の中では唯一非常に読みやすい論文です。

そこで、静止した座標系と等加速度運動をしている座標系の間の運動の関係を最初に示しています。その結果として、重力場の光の彎曲について述べ、実際に太陽の重力場による光の湾曲の大きさを計算しています。

簡単に言えば、加速度運動をしている箱の中から光の進路を見ると直線ではなくて、曲がって見えるので、重力場で光は湾曲するというものです。

 

 

 

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コメント

「重力は力でない」に納得して頂き、非常に嬉しく思っております。
私たちは力について始めに質点系力学として習っていますが、力の作用する物体の質量を質点と近似したことによって、力の特性の半分を無視していることを忘れているのだと思います。例えば、実際の力は点で釣り合うことは出来ないのですから。
また、力は座標の取り方で現れたり消えたりするものではありません。この点は質量も同じです。
「重力は加速度である」という表現は、重力が物体に対し力として作用するのではなく加速度運動を引き起こす作用であるとの意味です。

慣性力と重力の釣り合いの図がありますが、アインシュタインが気がついたのはこの釣り合いの図が間違いで、自由落下中の物体には力が働いていないということではなかったでしょうか。
私のHPの構成を少し整理しました。その結果、blog1のURLが変わってしまいました。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~pasadena/blog1gravity/blog1.htm

原さま

コメントありがとうございます。アインシュタインの論文では、確かに重力と慣性力の釣り合いに関しては何もかかれていません。重力場の座標系と無重力場における加速度を持つ座標系との関係から一般相対性理論が導かれています。
すなわち最初から無重力として自由落下を取り扱っていることは確かです。
ただ、古典力学的な考え方との対応も、理解の上では必要な気もしています。たしかに、慣性力と重力の釣り合いと書くと柔らかい物体の場合、なぜ歪が起きないのか、個々の原子に同等に力が働いているとしても、説明には、無理があることは、承知しています。そのために、上の文章でも、最後に慣性力に関して、疑問視しています。このあたり、1908年に電気および放射線に関する年報に発表された最初の論文が手に入ればいいのですが、現在の私の環境では難しそうです。

教えてください。
小学校で理科専科で教えている教員です。

温度計のアルコールを膨張させるエネルギーは、周りに接している物質の運動エネルギーがアルコールの運動エネルギー上昇につながっているのか、周りの物質から出ている電磁波によってアルコールの運動エネルギーが上昇しているのか?
温度が下がるとき真空状態では物質の運動エネルギーの伝達では説明できない気がします。
どのように説明するのがいいのか教えて頂けるとありがたいです。

横井様
コメントありがとうございます。
直接メールでお答えいたしましたので、よろしくお願いいたします。

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