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2011年11月30日 (水)

自由落下と空気抵抗:熱気球競技の場合

このブログの読者の方から、熱気球競技の話を伺って、空気抵抗のある場合の自由落下について考えてみました。

既に、落下速度と空気抵抗の関係は、以前書いたので、ここでは主に落下時間・距離と空気抵抗について書いてみましょう。

 

以前の記事2011930日の記事「霧雨と秋雨と土砂降り:雨の落下速度と空気抵抗」でも書きましたが、ほとんどの場合、自由落下の空気抵抗は速度の2乗に比例します。

したがって、最終速度は重力、すなわち

 

重力=質量×重力の加速度

 

と空気抵抗力

 

空気抵抗力=抵抗係数×速度の2

 

が釣合った条件、

 

抵抗係数×速度の2乗=質量×重力の加速度

 

となり、最終速度は

 

最終速度=(質量×重力の加速度÷抵抗係数)の平方根

 

になります。

 

自由落下では、落下速度と時間、および落下距離と時間の関係を求める必要があります。

しかしこれを得るには微分方程式を解く必要があるので、このブログの範囲を超えてしまいます。

そこで、ここではといた結果だけを見せることにしましょう。

解法に興味のある方はこの記事の次に付録を載せますので、それをご覧ください。

 

熱気球競技では気球からマーカーを目標に向けて落下させ、その位置の精度を競うそうです。

マーカーは10cm×10cmの袋と幅10cm長さ170cmのナイロンの布から出来ています。

質量は7gです。袋に70gの砂(ビーズ)を入れ、全体を77gとします。

このマーカーを落下させるのですが、空気抵抗は砂の入った袋部分の断面積による抵抗と、うしろのナイロン布の部分の抵抗が効いてきます。

ナイロン部分の抵抗はかなり大きいと思われますが、この取り扱いはかなり厄介なので、まずはそれを考えないで、砂袋のみによる抵抗で考えて見ます。

 

砂袋による抵抗係数は0.5×空気の密度×砂袋の断面積となります。

空気の密度は通常は1.2 kg/m3です。

砂袋の断面積は砂を入れたことで3cmほど膨らむとすると、10cm×3cm0.003 m2です。

これらの値から、抵抗係数は0.0018 kg/mになります。

質量は77g0.077 kg、重力の加速度は9.8 m/s2ですので、

最終速度は

 

最終速度=(0.077×9.8÷0.0018)の平方根=20.5 m/s

 

すなわち、秒速20 m(時速72km)になります。

 

図は落下速度と時間のグラフです。

Photo

 

落下を始めてから5秒後にはほとんど最終速度になっています。

 

最終速度の90%の速さになるまでの時間は

 

0.5×2.944×最終速度÷重力の加速度=1.47×20.5÷9.83.1

 

最終速度の90%になる時間は3.1秒となります。

最終速度の99%だと2.944(これは19の自然対数)が5.29199の自然対数)になるので、最終速度の99%になるまでの時間は5.5秒です。

 

この式から分かるように最終速度が遅いと最終速度に近づく時間は速くなります。

マーカーは速い時間で最終速度になります。

例えば、ナイロンの布の影響で、最終速度が30%遅くなるとすると最終速度の99%になる時間は5.5秒に0.7をかけて、3.9秒となります。

 

それでは、落下距離と時間の関係はどうでしょうか?

これも微分方程式を解かなければならないので、解法や詳細は付録をご覧ください。

 

下の図はナイロン布の抵抗を考えない場合の落下距離と時間の関係です。

Photo_2

 

落下距離は地上から上空に向かって正にとっているので負の値になっています。

ピンクの直線は、気球からマーカーを最終速度で放出した場合です。

最終速度に近くなる5秒後からはブルーの線とピンクの線は平行になっています。

 

気球からの落下は、気球が風で移動しているので、上空から地上まで同じ風が吹いていると仮定すると、マーカーは移動方向には空気の抵抗を受けず、気球から見ると真下に落下したように見えます。

したがって、上のグラフは気球から落下するマーカーの軌跡でもあります。

 

最終速度に以降のピンクの線とマーカーの軌跡の時間差は

 

時間差=0.693×最終速度÷重力の加速度

 

です。係数の0.6932の自然対数です。砂袋だけの場合の時間差は最終速度20.5 m/sを入れると、1.45秒です。かなりきわどいです。

最終速度が小さいと、更にこの差の時間は小さくなります。

 

マーカーにはナイロンの布がついています。

砂袋が落下する場合、砂袋によって後に渦が出来て、ナイロンの布はひらひらとたなびきます。

この抵抗はかなり大きそうですが、計算は厄介です。

ただ、この空気抵抗は渦が作る抵抗と考えると、速度の2乗に比例しそうです。

この場合、落下時間から実験的に最終速度が求まりそうです。

 

これには、最終速度になったときの落下距離と時間の関係

 

落下距離=最終速度×時間 0.693×最終速度の2乗÷重力の加速度

 

を使います。これから、時間と最終速度の関係は

 

落下時間=落下距離÷最終速度+0.693×最終速度÷重力の加速度

 

となります。これを落下距離100mから500mに対して示したグラフを下に示します。

Photo_3


しかし、落下実験では、落下距離と落下時間を測定するので横軸が落下時間のほうが好都合です。

 

それには2次方程式を解かなければならないので、詳細は付録にすることにして、ここでは結果だけを下のグラフで示しましょう。落下距離は100mから500mについて示してあります。

Photo_4

 

例えば、落下距離500mで、落下時間が45秒とすると、最終速度は秒速15.7 mになります。50秒で、秒速14.1 mです。

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