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2011年9月 3日 (土)

衛星の公転周期と軌道半径(太陽の反対側に惑星があるかも?)

衛星の公転周期は軌道半径と中心となる星の質量で決まり、衛星の質量には依りません。

 

ですから、例えば月の軌道は月の質量とは無関係に決まっているのです。

 

これは次のような理屈です。

 

例えば、地球の周りを回る月を考えましょう。

月の軌道はほとんど円形なので、簡単のために、円軌道を仮定します。

月は下の図のように地球からの引力と円周を回るときの遠心力で釣合っています。
また、地球にも地球と月の間の引力に等しい遠心力が働いています。
これは、月が地球を中心として回っているのではなくて、地球と月の重心の位置(地球の中心から約4700 kmほど月に近い位置)を中心として回ってるので、地球にも遠心力が働くのです。
ハンマー投げの選手がハンマーを投げるときに、少し体を倒して投げるのも同じ理屈です。

Photo_2


 

 

 

すなわち

 

遠心力=月と地球の間の引力

 

です。この引力は

 

月と地球の間の引力=万有引力定数×月の質量×地球の質量÷(軌道半径の2乗)

 

遠心力は

 

遠心力=4×πの2乗×月の質量×軌道半径÷(公転周期の2乗)

 

ですので、月と地球の間の引力にも遠心力にも月の質量が共通に入っていて、遠心力と月と地球の間の引力を等しく置くと、月の質量が消去できます。月の質量を衛星の質量としても同様です。

 

ここで更に、

 

軌道半径=n×地球の半径

 

とします。そうすると

 

月と地球の間の引力=月の質量×{万有引力定数×地球の質量÷(地球の半径の2乗)}÷(n2乗)

 

になります。上の式の中カッコ内は重力の加速度です(2009824日の記事:「地球の重さ(質量)」参照)。

 

したがって、

 

月と地球の間の引力=月の質量×重力の加速度÷(n2乗)

 

と簡単になります。

 

遠心力と引力を等しいと置いて月の質量を消去して、nを右辺の分母に持ってゆくと

 

4×πの2乗×地球の半径÷(公転周期の2乗)=重力の加速度÷(n3乗)

 

したがって、公転周期は月の質量には依らずに、公転の軌道だけによることが分かります。

これは月だけではなく、衛星でも同様で、人工衛星や、宇宙ステーションに色々な建造物をつけても軌道が変わらないのはこのためです。また同じ軌道上を回る人工衛星はお互いにぶつからず同じ間隔を保って回っています。

 

ということは、地球と同じ軌道で丁度太陽を挟んで反対側に別の惑星がいるかもしれないというSF小説の格好の材料としての妄想が沸いてきます。実際には、精密な惑星の運動の測定からそのようなことは無いことが分かっています。

ここで、公転周期を求めてみましょう。

上の式から、

 

公転周期の2乗=(4×πの2乗×地球の半径÷重力の加速度)×(n3乗)

 

です。ここで、カッコ内はこの前の記事「地球上どこへでも42分で行く方法」で述べた地球を貫く真空の管に物体を落としたときの物体の振動の周期の2乗になっています。

すなわち、n=1とした時の、いわゆる海抜0 m における衛星の公転周期、1.4時間に等しくなっています。

 

地球を貫いて振動する周期と海抜0メートルの衛星の公転周期が等しいことは興味深いことです。

 

結局、月、あるいは衛星の公転周期は

 

公転周期=1.4時間×(n3乗の平方根)

 

となります。月の軌道半径は地球の半径の約60倍(理科年表:丸善株式会社)なので、

n60とすると、603乗の平方根は464.8なので、1.4倍して、650.7時間。これを24時間で割ると、月の公転周期27.1日がでてきます。

 

地球の半径の倍数nと公転周期の関係は下のグラフのようになり、n6.7で周期が約24時間です。

Photo_3

 

静止衛星は、地球に自転に沿って赤道上を回っているので、周期は24時間。

 

したがって、静止衛星の軌道半径は地球の半径の6.7倍なので、地上から36300km上空にあることになります。

 

ここまでは、地球の外の軌道を考えてきましたが、では、下図のように地球の中に環状の真空の空間を作って衛星軌道を作ったらどうなるでしょうか?

 

5

 

一つ前の記事「地球上どこへでも42分で行く方法」で述べたように、地球内部での引力は

 

引力=衛星の質量×(重力の加速度÷地球の半径)×中心距離

 

です。一方、遠心力は

 

遠心力=4×πの2乗×衛星の質量×中心距離÷(公転周期の2乗)

 

です。

 

遠心力と引力を等しいと置くと、赤字の部分は消去できるので

 

公転周期の2乗=4×πの2乗×地球の半径÷重力の加速度

 

となって、

 

公転周期=2×π×{(地球の半径÷重力の加速度)の平方根}=1.4時間

 

となります。地球の内部では、地球の中心を半径とする真空空間を運動する衛星の公転周期は等しく1.4時間ということになります。地球内部では直線的な振動でも円運動でも周期は同じになるということです。

 

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コメント

衛星と軌道半径の周期についてですが、静止衛星でもここに書かれている方法で求められますか?

コメントありがとうございます。
もちろん求められます。
このブログの後ろのほうに、静止衛星について書いていますが、それでは不十分でしょうか?
わかりにくい部分があれば、おっしゃっていただければ補足いたします。

遠心力と引力(万有引力)が釣り合っているという図はJAXAのHPでも他の教科書でも見られますが、アインシュタインは自由落下中の物体は重力(万有引力)が消えていることに気が付いたと言っています。そしてこのことが一般相対性原理の確立の動機だと言っています。人工衛星も月も自由落下状態にあることは変わりありませんから、アインシュタインは力の釣り合いではないことに気が付いたわけです。
私はニュートンが万有引力の式を導いたときに加速度をF/mで置き換えたから力の式である万有引力の式になったのだと思います。二つの大きな質量の間には距離の逆二乗に比例する加速度運動があるだけで、力が働いていることは実証されていないように思います。(キャベンディッシュの実験も加速度運動を止めるために必要な力を測っているのであって、万有引力を測定しているのではありません。)
アインシュタインは地球のように大きな質量は付近の時空をひずませるとしたわけですが、時空のひずみは物体に力を及ぼすのではなく加速度運動を起こすのではないでしょうか。
つまり、重力(Gravity)は力でなく加速度なのだと思います。

原さま
コメントありがとうございます。返信が遅くてすみません。
おっしゃるように公転運動は自由落下状態の一つということは、地球を貫通させた自由落下の周期と公転運動の周期が等しいことから分かります。
一般相対性原理からは、自由落下している人間には落下のもとになる力は感じていないので、その人間が静止している物体を見て、力を受けて加速していると感じるわけですから、万有引力が力ではなく、加速度と定義した方が理に適っているというのは理解できます。
 一方で、加速度を引き起こすのは力であるという考え方は、種々の現象を理解するうえで、非常に便利な概念でもあります。
物体を押したり引いたりする力に対して、遠隔力は加速度と定義することには、まだ本当にそれでよいのかということまで、私の理解は到達していません。

アインシュタインは講演先のあちこちで言っているのですが、「私の生涯最高の思いつき」は「自由落下をしている物体は重力が消えている」ことで、「それは1907年のことであった」とあります。この発見に力を得て一般相対性理論に取り組んだことになります。
この結果、大きな質量の周囲の時空がひずんでいるという結論になったとのことですが、時空のひずみが物体に及ぼす効果は物体に力を及ぼすのではなく、物体に加速運動を与えることだと思います。
時空のひずみとは言い換えれば重力場であって、遠隔力は否定されているでのは無いでしょうか。ニュートンでさえ万有引力を遠隔力と考えるのに抵抗があったとのことです。
ケプラーの法則から万有引力と言う力の式にしたのは、ニュートンの仮説であって、力であることは(私が思うに)実証されていません。

済みません、最初のコメントと同じことを繰り返してしまいました。
重力(Gravity)という現象は、物体に加速運動をさせるだけで、力を及ぼしているのではないという意味です。物体に力が加わると必ずその物体に応力・歪を生じさせます。
加速度があれば力が働いているに違いないとニュートンが考えたわけですが、万有引力の式は数式としてあっていますが、力であるということは実証されていないと思うのです。
重力は押す力でもなく引く力でもないのです。ニュートンはフックを嫌っていたためか、力の要素の半分しか考えなかったように思われます。
質点系力学では応力・歪の概念が不要ですから、軌道力学の人達には全く理解して貰えません。彼らは力をベクトルと考えて差し支えないわけですが、それは近似であって、応力・歪まで考える本来の力はベクトルではなくなります。テンソルでしょうか。

原さま
コメントありがとうございます。返事が遅くなり申し訳ありません。実は物理オリンピックの問題作成に関わっており、重力の加速度の測定の部分を担当していたために、うっかりしたことが書けず、時間が立ってしまいました。
重力、あるいは万有引力について、私もまだ十分に理解はできていないのですが、応力場あるいは歪場では、質点に力ではなく、加速度が働いていると考えるわけでしょうか。
結晶などの応力場では力はベクトルではなくテンソルですが、確かに、一般相対性理論では、テンソル場が出てきますね。
自由落下でも、あるいは、重力が関係する現象では、力の概念は必要なく、加速度の概念だけで理解が可能ですので、力よりも加速度の方が一般的といえそうな気もします。

お忙しい中、ご回答ありがとうございます。
私は大学を出て最初の仕事が構造強度に関係していたせいか、力と言えば応力・歪なのです。そして、力は慣性力も含めて常に釣り合い状態にあり、点でも線でも釣り合えず、面で作用するという観念があります。
天体の運行解析のように質量を点で表すことにしてしまえば、力はベクトルで表現でき便利ですが、見かけの力と実際の力との区別がつきません。
重力が物体に働くのは力としてではなく、加速度運動としてであることにアインユタインは気が付いたのだと思います。
結局、力とは何かに戻るのですが、ニュートンの運動の第2法則は力の定義式に使ったことが良くなかったのではないかと思います。質量こそ、運動変化に対する抵抗性ですから、質量の定義に使い、力はフックの法則で定義したほうが(精度はともかく)すっきりするように思うのです。
如何でしょうか。

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