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2010年9月14日 (火)

比熱の話:固体の比熱

2つ前の記事で、気体の比熱は、気体分子の持つ運動エネルギー(回転運動や振動も入れました)に、外から加えたエネルギーが吸収されるので、運動の成分が多いほど比熱が大きくなる、すなわち、加えるエネルギーが大きいと言うことを話しました。

 

固体の場合はどうなのでしょうか?(本当は液体から始めるべきなのですが、液体は、意外に複雑なので、固体から始めることにします。物理では、液体のような中途半端な状態は、扱いにくいのです。)

気体のように原子や分子は自由に動けません。

動こうとすると、すぐに隣の原子とぶつかって押し戻され、振動します。

この振動は、原子の持つ運動エネルギーと、隣の原子との間の力による位置エネルギーによって起ります。

原子の運動エネルギーと位置エネルギーに、外から加えたエネルギーすなわち熱量は消費されます。

 

まずは単純な固体、すなわち1種類の元素からなる固体の比熱を考えましょう。

そこで、理科年表(丸善)から、いくつかの固体の定圧モル比熱を拾ってみました。

 

全て室温、25℃の値です。

 

亜鉛:25.48 J/molK

アルミニウム:24.34 J/molK

鉄:25.23 J/molK

銅:24.47 J/molK

銀:25.49 J/molK

金:25.38 J/molK

錫:26.36 J/molK

鉛:26.82 J/molK

ニッケル:26.05 J/molK

 

などです。固体の場合も定圧モル比熱はほとんど同じ値になっています。

固体中の分子の持つエネルギー、いわゆる内部エネルギーの変化、に対するモル比熱、定積モル比熱を出すためには、固体の膨張で使われるエネルギー分を出しておかなければなりません。それを式で書くと

 

膨張によるエネルギー消費量=圧力×1モルの体積×体膨張率

 

になります。体膨張率の実験値はあまり測られていませんが、多く測定されている線膨張率の3倍でほとんどの場合は近似出来ます。

 

体膨張率は、亜鉛で10万分の9(すなわち8.9×105/K)程度、アルミニウムで10万分の7程度(6.9×105/K)、金が10万分の4程度と大体、10万分の1から1万分の1程度の値です。

1モルの体積(モル体積)は、亜鉛が1モル65g、アルミニウムが27g、金で197gなので、これらをkg単位に直してから、それぞれの密度、亜鉛で7120kg/m3 、アルミニウムで2690kg/m3、金で19300kg/m3、で割ると体積が出てきます。

体積は、亜鉛が、65÷10000.065kgなので、0.065÷71200.000009m3になります。

だいたい、10万分の1立方メートルの体積です。

したがって、1気圧すなわち1013ヘクトパスカル(約10万パスカル(Pa)の圧力下で、膨張によるエネルギーの消費量は

 

亜鉛の場合、1013×10万分の1×10万分の9=約100万分の1 J/molK

 

ということになって、ほとんど、膨張の効果は無視できます。アルミニウムや金でも上の値を使って、計算してみると無視できる値になります。これは他の固体でもほとんどの場合、無視できる値になります。

 

そこで、気体のモル比熱の場合と同様に、定圧モル比熱を気体定数で割ってみると、どれも、気体定数、8.30527 J/molKの約3倍の値ということになって、気体定数の3倍の値、24.9 J/molKに近い値を示しています。

固体のモル比熱がほとんど同じ値を示すことをデュロン・プティの法則と言っています。

 

これも、エネルギー等分配の法則によっているのでしょうか?

 

固体内の原子の振動が、運動エネルギーと位置エネルギーによっていることは既に話しました。

運動エネルギーも3つの方向に自由に動ける、すなわち自由度があり、位置エネルギーも3つの方向からの力によるので、やはり自由度は3つあります。

したがって、原子1個の一つの自由度にkBTの半分のエネルギーが分配されるので、原子一個に運動エネルギー分の3個と位置エネルギー分の3個、合計6個の自由度が与えられて、6倍すると原子一個当たり、3kBTのエネルギーを消費します。ただし、前の記事で書いたように、kBはボルツマン定数で、これにアボガドロ数をかけると気体定数になります。またTは温度(絶対温度)です。

 

モル比熱では、この値にアボガドロ数をかけるので、モル比熱は3倍の気体定数になるのです。

 

これでめでたしめでたしのようですが、化合物では、この値からずれたり、低温では、小さい値になったり、この考え方からでは説明のつかない結果もあります。

これについては、また次に話しましょう。

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コメント

ここの例でいえば、ニッケル銅は、ニッケルが26.05 J/mol・Kで銅が24.47 J/mol・Kですね。

ところがニッケル銅となると、比熱が大きく変わるわけですね。

混合比率によっても、差がでるのでしょ。

元素の大きさの違いが、揺れ方に影響するからでしょうか。

Covaさん

コメントありがとうございます。合金の場合はおっしゃるように原子の質量によって原子のゆれ方が変わり、振動のモードが変化して、比熱に効いてきます。
混合比率によっても変わってきます。

これを何とか分かりやすく書けないかと思っているうちに
時間が経ってしまいました。

運動と熱は、密接な関わりがあるわけでしょ。

大きさが異なる元素が混ざれば、当然、振動の仕方も変化しますよね。

混合比率で振動の状態も変化するから、混合比率と一緒でないと比熱を特定できないので、今回の表では合金のようなものは残念ながら省かれたのでしょう。

液体の比熱は、ある意味、混合物の比熱と似てませんか。

もちろん、自由度の差などあるので完全に重ならないのはわかりますけど。

Covaさん、コメントありがとうございます。
2種類以上の元素による混合物では、元素の大きさではなくて、質量の違いが非常に効いてきます。
質量の差による振動数の違いによって、固体中に表れる振動のスペクトルが複雑になります。
比熱は、その振動のスペクトルを積分したものに比例しますので、今回考えたような単純なモデルでは説明できなくなります。

また、今回合金等の比熱を省いたのは、合金では、モル比熱に換算するのが難しいためでもありますが、それ以外にも複雑な面があり、問題が見えなくなることを恐れたためです。

ところで、液体については、多くが液体中で分子状になるので複雑になるのですが、単体で液体になるカリウムや水銀は、固体の場合とほぼ同じ値、Hg :27.98J/mol・K、カリウムが31.5J/mol・Kと比較的近い値になりますが、化合物になると有機、無機を問わず固体でもかなり大きい値になります。

これは、質量の違いにより、振動の自由度が増加したためと考えられますが、振動状態との関係で、温度依存性も出てきて、かなり複雑になります。

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