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2010年9月 6日 (月)

比熱、なぜか不思議:まずは気体の比熱から

比熱と言うと、まずは、水の比熱。

水の比熱は、1気圧の圧力下で1グラム(g)の水を0℃から100℃まで100ケルビン(100K)だけ加熱するのに必要な熱量を100カロリー(cal)として、平均で、水1グラムを1ケルビン(1K1℃と目盛りは同じ)上昇させるのに必要な熱量を1カロリーとしています。

実際には、温度によって、水の比熱は微妙に変化します。

 

一般には、物体の比熱は、1グラムの物体を1ケルビン上昇させるのに必要なエネルギーと定義されています。

物体の温度が1K上昇すると物体の持つエネルギーはそれだけ増加します。

その増加分が外からの熱量、すなわちエネルギーで供給されるのです。

したがって、比熱は1gの物体の温度が1K上昇した時のその物体の持つエネルギーの増加分でもあるわけです。

 

物体の持つエネルギーは、物体中の分子の運動エネルギーと位置エネルギー。

比熱の場合は、さらに、温度が1K上昇した時の物体の膨張によって、その分エネルギーが使われるので、膨張で、物体がした仕事の分を加えなければなりません。

(仕事については2009221日の記事、「エネルギー(カロリー計算1)」を参照のこと)

 

位置エネルギーを考えるのは、ちょっと厄介なので、分子同士の間に働く力(相互作用といいます)を無視できる、気体、特に、まずは理想気体について考えて見ましょう。

 

理想気体とは、分子間の相互作用を完全に無視できる理想的な気体です。

 

理想気体の持つエネルギーは、分子間の相互作用を無視できるので、位置エネルギーは無視できて、運動エネルギーだけになります。

 

したがって、加えた熱量、すなわちエネルギー分だけ、物体の中の全分子の運動エネルギーが増加します。

 

ということは、一個の分子の運動エネルギーは、加えたエネルギーを全分子の数で割った量になると言うことですね。

 

この値は、分子の種類には依らないので、比熱は分子の数が同じなら、比熱も等しくなるということになのでしょうか?

そんな不思議なことが本当にあるのでしょうか?

 

そこで、いくつかの気体の比熱を調べてみましょう。理科年表(丸善)によると、

1gあたりの気体の比熱は一定の圧力の下では、

 

ヘリウム(He):5.232 J/gK

アルゴン(Ar):0.523 J/gK

水素(H2):14.385 J/gK

酸素(O2):0.922 J/gK

窒素(N2):1.034 J/gK

一酸化炭素(CO):1.038 J/gK

一酸化窒素(NO):0.971 J/gK

塩化水素(HCl):0.812 J/gK

二酸化炭素(CO2):0.832 J/gK

水蒸気(H2O):2.051 J/gK

 

となって、一見、似ているような、似ていないような値です。

1g中の気体の分子の数は、気体の種類が異なれば異なる値になります。

そこで、1モル(mol)の気体の比熱に換算します。これをモル比熱と言います。

モル比熱にするには、1gの気体の比熱に分子量を掛ければ良いのです。

 

まず、ヘリウムとアルゴンは不活性気体(希ガス)なので、1原子からなる分子です。

そこで、ヘリウムでは原子量が4、アルゴンは原子量が40なので、それを掛けると

 

ヘリウムのモル比熱:5.3232×420.928 J/molK

アルゴンのモル比熱:0.523×4020.92 J/molK

 

とほとんど同じ値になります。

この場合は、ほとんど理想気体と見てもいいかもしれません。

 

では、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、一酸化窒素、塩化水素などの2つの原子からなる分子、2原子分子でも同じになるでしょうか?

それぞれの値に分子量をかけて、モル比熱を出してみます。

 

水素:14.385×228.716 J/molK

窒素:1.034×2828.95 J/molK

酸素:0.922×3229.504 J/molK

一酸化炭素:1.038×2829.064 J/molK

一酸化窒素:0.971×3029.13 J/molK

塩化水素:0.812×3629.232 J/molK

 

となって、2原子分子のモル比熱の値はほぼ等しいのですが、ヘリウムやアルゴンなどの1原子分子のモル比熱よりも約8 J/molK大きくなっています。

2原子分子の場合のモル比熱が大きいと言うことは、原子一個の場合より、余計なエネルギーを分子が必要としているということです。

このエネルギーが何処で消費されるのかは、後で考えましょう。

 

それでは、3つの原子から出来ている、3原子分子の水蒸気や2酸化炭素はどうでしょうか?

 

水蒸気:2.051×1836.918 J/molK

2酸化炭素:0.837×4436.828 J/molK

 

となって、3原子分子もほぼ同じ値になりますが、2原子分子よりも更に約8 J/molK大きくなっています。

 

この8 J/molKと言う値は、気体定数の8.317 J/molKに非常に近い値です。

(気体定数については2009410日の記事「浮くということ:熱気球」を参照のこと)

 

ということは原子が増えるとモル比熱も増えるのでしょうか?

そこで原子を2つ増やして、例えばメタンガス(CH4)のモル比熱は?というと、 2.210×1635.36 J/molKです。

ということは、そう単純ではなさそうです。

 

しかし、差が気体定数に近い値と言うことは、モル比熱の値が気体定数に関係があるかもしれないということになります。

そこで、次に、モル比熱の値を気体定数で割ってみます。そうすると、ヘリウムとアルゴンのモル比熱の値は、気体定数の約2.5倍と言う結果が出ます。

また、2原子分子では、気体定数の約3.5倍、3原子分子では約4.5倍になります。

 

これはなぜなのでしょうか?

 

この理由を考えるために、外から与えたエネルギーが気体のエネルギーにどのように分配されたかを考えて見ましょう。

 

まず、気体に熱すなわちエネルギーを与えると、温度が上昇して、その結果、気体は膨張します。膨張による体積の変化と温度の変化は、ほとんどの気体で、次の関係になります。

 

圧力×体積変化=気体定数×温度変化

 

これは1モルの気体に対する関係式です。(2009410日の記事「浮くということ:熱気球」参照、ボイル・シャルルの法則)

この式の左辺は、1モルの気体にエネルギーを与えた時に気体がする仕事と同じになります。

これは、圧力は力÷面積で、体積変化は面積×移動量なので、これらを掛けると左辺は面積が消去できて、力×移動量になります。これは、仕事になります。

(圧力については2009313日の記事、「浮くということ」、仕事については2009221日の記事、「エネルギー(カロリー計算1)」を参照のこと)

 

温度変化に対して、これだけの仕事を気体はするので、この分のエネルギーが使われることになります。

したがって、このエネルギー分が比熱に寄与する部分は、圧力×体積変化÷温度変化になります。

これは気体定数そのものなので、一定の圧力の下での気体の比熱には、体積変化分の比熱の値、すなわち気体定数の値が加わっているのです。

この圧力一定の条件での比熱のことを定圧モル比熱と言います。

 

そこで、気体のモル比熱から気体定数だけ引き去ると、1原子分子のモル比熱は気体定数の約1.5倍、2原子分子は約2.5倍、3原子分子は約3.5倍になります

この比熱は、体積を一定としてエネルギーを与えて温度を上昇させるときの比熱になっているので、定積モル比熱と言われています。


これらの値は、気体定数の2分の1を単位とすると、それぞれ、3倍、5倍、7倍になっています。

 

1原子分子の3倍という値について、まず考えて見ましょう。

気体の原子は自由なので、どの方向でも動き回ることが出来ます。

もし空間が1次元ならば、自由に動ける方向は1直線状の方向、プラスマイナスで2方向ですが、これをまとめて1方向とすると、自由に動ける方向は1です。

これを自由度と言います。

そうすると、2次元では2方向に自由に動けます。すなわち自由度は2

3次元では、3方向に自由に動けるので自由度は3となります。

 

気体分子は3次元の空間を運動しているので、自由度は3になります。

ということは、定積モル比熱の値は、自由度×気体定数の半分なのでしょうか?

 

この考え方で行くと、2原子分子では、自由度は5と言うことになります。

余計な2つの自由度は何処から来るのでしょうか?

 

2原子分子では、2つの原子がつながって、鉄アレイのような形になっています。

鉄アレイ型の分子はエネルギーを得ると回転します。

したがって、2原子分子の場合は、運動のエネルギーの他に回転にもエネルギーを取られるわけです。

回転の方向は2種類の方向があります。したがって、自由度も2つ増えて5になるのです。

 

では、3原子分子ではどうでしょうか?

3つの原子は1直線に並んでいることはほとんどなく、角度がついています。

そのため、回転の方向は3種類(回転の軸がxyz軸の3種類)になりますので、自由度は更に一つ増えて6になりますが、7ではありません。

3原子分子の場合、真ん中の原子に対して両端の原子が蝶の羽のように振動するので、そのためのエネルギーが必要になります。

自由度の一つは、その振動に使われるので、自由度が7になるのです。

 

このように、運動のひとつの自由度に等しいエネルギー、すなわち気体定数の半分が使われる、言い換えれば分配されるので、これをエネルギー等分配の法則と言います。

 

実際には、分子一つ一つにこの法則が適用されるので、ある温度での一個の分子の1つの自由度に分配されるエネルギーは、気体定数をアボガドロ数で割った値、すなわちボルツマン定数、に温度を掛けて半分にした値になります。

 

ボルツマン定数をkB、温度をTとすると、kBT/21個の分子の1つの自由度に分配されるエネルギーです。

 

ボルツマン定数は気体定数8.30527J/molKをアボガドロ数6.02217×1023で割った値、

1.38×1023 J/Kになります。

 

それでは、液体や固体でも同じようになっているのでしょうか?

 

それは次に話しましょう。

不思議な話も良く考えると不思議ではなくなりますね。

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コメント

水素の加熱実験をしています。約400℃以下で真空ポンプで圧力を下げて加熱を続け、気密不良等で真空度が下がるため、再び真空ポンプで圧力を下げると、約0.015気圧降下で温度が20度以上上昇します。これはどういうことなのでしょうか。
また、200℃くらいで水素を加圧挿入(5気圧、気密不良のため5分後には1気圧に戻るのですが)しても、一旦温度が下がり、暫くしてもとの温度に戻るだけなのですが、400℃くらいで水素を加圧挿入すると、一旦温度が下がり、直ちに急激な温度上昇が始まり、もとの温度より、30度くらい上昇しました。これはどういうことなのか頭を悩ましています。納得できるような考えがあれば、お教え下さい。

神崎様
コメントありがとうございます。
水素の問題は通常の気体の問題とかなり異なります。
気体の圧力に関するvan der Waals方程式で第2項の凝集力に関する項がありますが、この項が大きく影響します。この項は気体を液化するときの臨界圧力に比例します。
圧力を臨界圧力で割った値をP'、温度を臨界温度で割った値をT'とすると
P'=24√3T'-12T'-27
の時に気体の熱膨張率は1/Tと等しくなります。この熱膨張率と1/Tが等しいときに圧力と温度を決める曲線を逆転曲線と呼びます。
P'>24√3T'-12T'-27のとき、気体の体積の膨張に対して温度が上昇するという逆転現象が現れます。このとき、熱膨張率は1/Tより小さくなります。水素の場合、臨界温度は33Kなので、T'が約10の室温以上では常に上の条件が満たされます。
この条件では、断熱膨張などで気体の圧力が下がると温度が上昇します。逆に加圧すれば温度は下がります。しかし、もし気密不良で水素が漏れ出している場合、圧力の降下で温度上昇があると思われます。
実際の事故では、水素ボンベから急激に水素を噴射して温度が上昇し、発火・爆発したことがあるようです。

貴重なご意見ありがとうございます。疑問に思っていたことの大きな部分が理解できました。まだ、良く納得できないところもありますので、実験で確認したいと思います。本当にありがとうございました。

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