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2010年8月11日 (水)

IHコンロは本当に効率的なのか?

 

最近、娘に分譲マンションのモデルルームの見学をつき合わされた。

そこは今流行のオール電化で、台所のコンロもIHヒーターを使っていた。

IHヒーターを使っているので、効率的で、エコとのうたい文句。

本当に効率的なのかな。

実験するすべがないので、物理的にどうなのか、考えてみる。

 

IHヒーターは、数kHzの周波数の振動磁場を発生させて、

それによって、金属の鍋に交流の電流を誘導させて、電流の抵抗による熱の放出、

すなわち、抵抗加熱によっています。

 

鍋が直に熱を出しているので、効率が良さそうです。

 

IHヒーターの効率を考える時厄介なのは、定格電力がそっくりそのまま使われているとは限らないことです。

 

IHヒーターの原理は、電圧を変換する変圧器(いわゆるトランス)と同じで、電磁誘導を使っています。

金属中には、自由に動ける伝導電子があり、磁場がかかると電子は回転運動をします。

磁場が一定ならば、電子はでたらめな方向に回転しながら運動し、全体としては、電流は流れていない状態になります。

磁場が動くと、電子はその磁場の変化を打ち消すように動きます。

(これは、電子が運動をしていると磁場を放出し、それによる反作用が関係しています)

この動きの方向は揃っているので、電流となるのです。

 

金属の鍋には、伝導電子があるので、磁場の変化によって、鍋そのものに交流電流が誘起され、

電子が、金属中の原子と衝突して、熱が発生します。(いわゆる抵抗加熱)

 

ところで、振動磁場は、金属の鍋の外にも漏れ出しているはずです。

通常は、磁石に吸い寄せられる鉄の場合には磁力線はかなり鉄の中に入り込みますが、

ステンレスやアルミの鍋の場合は、磁力線のほとんどは鍋の外に出てしまいます。

そうだとすると、振動磁場を完全に効率的に使っているとは思えません。

 

しかし、エネルギー効率から言うと、どうなのでしょうか?

 

振動磁場のうち、電流を誘起している部分のエネルギーが、加熱に使われているはずです。

そうだとすると、磁場が漏れ易い、アルミなどの鍋の場合は、いわゆる火力が弱くなり、

その分、単位時間当たりの消費電力が少なくなると言うことになります。

 

結局、加熱に使うエネルギーの全てが、消費電力になるので、効率的だといえそうです。

しかし、エネルギーの効率はいいかもしれませんが、磁場の漏れの分だけ火力が落ちるので、時間も含めた効率からいくとどうなのかな。

 

ところで、数kHzの振動磁場は健康にはどうなのかなぁ…

安全性も、火がついているか、いないか、分からないので、うっかり金属を近づけたりすると、加熱される恐れがあって、ちょっと怖い気もしますね。

負荷がかかっていない時は、自然に切れればいいのかもしれない。

 

しかし、便利な仕掛けも、それを使いたくないときには、かえって厄介。

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コメント

でも、ガスコンロでも相当なカロリーが逃げているのでしょ。

その分を考えたら、IHのほうが歩留まりよくエネルギー使ってませんか?

Covaさん
はい、ガスコンロは、かなり熱が逃げていますね。
IHは、おっしゃるとおり、歩留まりよくエネルギーを使っていると思います。
ただ、電磁場を歩留まりよく使っているかと言うとそうもいえないような気がします。
ただ漏れた電磁場は、エネルギーを消費しないので、エネルギーの効率にはあまり影響ないと思っています。

漏れ電磁波は1~数%だと開発系の記事の記憶がありすます。
後は思ったより気合いの入った冷却ファンが付けられてるので
コイルからの熱損失の方が大きいと思いますよ。
熱応力でコイルの精度落ちもこわいですしね。

やんちさま

コメントありがとうございます。
確かに、コイルによる熱損失は大きいかもしれないですね。

IHの解説、とてもわかりやすく理解できました。漏洩磁束が消費電力に加算されないことも参考になりました。横槍ですみませんが、「気合いの入った冷却ファンが付けられてる」は私が思うに電力制御素子など制御系の冷却かなと思っています。息子が住んでいたアパートは契約アンペアが少なく、使用中に何度かブレーカが落ちて終いには故障してしまいました。きっといきなり電気が遮断されて冷却が出来なくなって素子が破壊してしまったと想像しています。この仮説、どうでしょうか。

コメントありがとうございます。
冷却ファンは制御系の冷却にも使われているとは思いますが、電力遮断による残留熱で制御系が劣化するとは思えません。
むしろ、電力が遮断されたときにコイルに流れる大きな誘導電流による制御系のショックが大きいのではないかと思います。電池等で補償されていれば良いと思うのですが。

こんにちは。
もっとも効率のよい調理方法は、直接ジュール熱を利用して調理することかなあと考えてみました。
たとえば電気パンの原理で調理はいかがでしょうか。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B0%97%E3%83%91%E3%83%B3)
肉や魚の両端に電極を付けて、100ボルトの交流電圧をかけるというものです。交流ですから電気分解の心配はないと思います。
素材の電気抵抗にもよると思いますが、15センチ程度の肉や魚なら電気抵抗が200Ωとして0.5Aくらいの電流が流れると考えるとたたの50Wですが全てが肉の発熱に使えます。塩を効かせると抵抗値はもっと下げられるでしょう。
自分なりに鶏肉や豚肉で実験してみました。電気パンの様に液体ではないせいか、ムラができますが電極を付け直しながら20分から30分でなかなか良い状態に焼けます。電極を改善すれば解決しそうな気がします。
一番無駄のない加熱方法と思うのですが、なぜこの原理を使った調理器具が無いのかが不思議です。昔の電気バンも今ではどこにもありませんし。電子レンジよりもよっぽど簡素な仕組みで製品化出来ると思うのですがどうしてでしょう。
IHからは話題がそれますがよろしくお願いします。

ふしぎさま
コメントありがとうございます。
素材に直接電流を流して、ジュール熱で加熱するのは確かに最も効率の良い方法だと思います。そこで、ではなぜ製品化されないのかというと、素材の内部の電気抵抗のバラツキ、電極の位置による電流の不均一性をクリアするのが難しいためだと思います。
料理は、簡単に出来なければならず、素材を置いてスイッチを入れるだけでむらなく火が通らないと、古典的な調理法よりも難しくなります。
電子レンジは実は素材に直接交流(マイクロ波ですが)を流してジュール熱で加熱する方法ではあるのです。マイクロ波の場合、素材の中にマイクロ波がある程度は均一に入り込むので、比較的簡単に、素材の形によらず調理できるので、比較的広まったと思われます。電極の場合、素材の大きさなどによって、電極の位置を変化させたり、間違って電極にさわらにようにしたり、使いやすくするためには、電子レンジと同様の複雑さ(電子レンジもマイクロ波の発生装置だけなのでそれほど複雑ではありません)を求められるので、これまでも考えた人はいるとは思いますが、なかなか商品にはなりにくかったのだと思います。

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