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2010年7月23日 (金)

高原では、なぜお米を炊くと芯ができるのか?蒸気圧と沸点

 

夏!山や、高原は涼しくて、気持ちをリフレッシュさせてくれる。

山の上でのピクニックやバーベキューで、お米を炊いたり、煮物をすると生煮えになることは良く知られている。

標高が高く、沸点が下がることも知られています。

これは、水の温度が沸点以上には上がらないためなのです。

 

なぜ、水の温度は沸点の温度以上に上がらないのか?

 

一つには、沸点に到達すると、水から蒸発熱が奪われて、蒸発に使われるために、それ以上温度が上がらないためです。

また、これには、沸点と蒸気圧の関係が大きく効いています。

 

この問題を考えるために、まずは、物体を真空中において見ます。

(物理では、日常の問題でも、その本質を調べるために、まず理想的な条件で考えるのです。その後に、それを日常に当てはめるのです。)

 

真空中に置かれた物体の表面からは、その物体表面を構成する分子(原子でも良いのですが、ここでは分子とします)が飛び出します。すなわち蒸発です。

この真空は壁で囲まれた容器、すなわち閉じた空間と考えます。

したがって、物体表面から飛び出した分子はその空間の中を運動しますが、外には出られません。

真空中を運動する分子は、そのうちに、もとの物体の表面に衝突して、吸着します。

 

蒸発した分子の数に対して吸着する分子の数が少ないうちは、物体表面から分子がどんどん蒸発します。

蒸発した分子は、真空容器の外には出られないので、容器の中は次第に蒸発分子の数が増えて、圧力が上がってきます。

蒸発分子の数が増えて、圧力(これを蒸気圧と言います)が上がると、物体表面に衝突する分子の数も増えて、そのうちに、表面に衝突して吸着される分子の数と蒸発する分子の数は等しくなります。

この状態を平衡状態といいます。

 

物体表面からの蒸発も吸着も、この平衡状態から先には進みません。

すなわち、もし、吸着分子の数が蒸発分子よりも多くなると、空間の分子の数は少なくなって、それによって、吸着分子の数は少なくなり、蒸発分子の数が多くなります。

こうして、蒸発分子の数と吸着分子の数が等しくなったところで、状態は安定な平衡状態になるのです。

このときの、蒸気の圧力を平衡蒸気圧と言いますが、単に蒸気圧と言うこともあります。

平衡蒸気圧の値は、他の気体があっても変わりません。

ドルトンの分圧の法則(原子とは何か?を参照)によって、気体中の平衡蒸気圧は保たれるのです。

例えば、容器の中に空気と物体を入れて密閉し、中の圧力を1気圧とすると、空気の分圧は1気圧から物体の蒸気圧を差し引いた値になります。

 

蒸気圧の値は、物体の温度で変わります。温度が低ければ、蒸気圧も低い値になります。

 

水の蒸気圧は100℃で1013Pa(ヘクトパスカル)、すなわち1気圧です。

したがって、1気圧の大気圧中では、水は100℃までしか上昇しません。

 

なぜなのか?

 

水を鍋に入れて、蓋をして加熱します。

蓋をしなくても良いのですが、問題を少し見やすくするには蓋をした方が分かり易いのです。

蓋からは、もちろん蒸気が出易くなっています。

室温が27℃では、水の蒸気圧は35Paと非常に低いです。

したがって、水蒸気の空気に対する割合は、1013分の35なので(1気圧は1013Paなので)、体積で約3%です。

加熱して水の温度が上がってくると、水の蒸気圧も上がり、その分、空気は鍋の蓋から外に押し出されます。

100℃になると、鍋の中はほとんど100%が水蒸気で占められることになります。

 

沸騰は、水の中で、水蒸気は気泡を作ることによって起ります。

これは加熱の速度が速く、水面からだけの蒸発に対して、熱の供給(エネルギーの供給)が過剰になり、液中においても気体に変化するためです。

 

物質が液体から気体に変化する時、分子間の結合を切って、自由になるためのエネルギーが必要になります。

これが蒸発熱(蒸発エネルギー)です。

 

1気圧の大気圧下で、加熱しても水の温度が100℃以上に上がらないのは、水温がそれ以上になろうとしても、水蒸気の気泡を作ってしまい、そのために蒸発熱としてエネルギーを取られてしまうためなのです。

 

大気の圧力が低い場合には、その大気圧に対応した蒸気圧の温度までしか水の温度は上昇しません。

これは、水蒸気の圧力が大気圧よりも高くなれないためです。

もし水蒸気の圧力が大気圧よりも高くなれば、その分、大気を押しのけてしまい、その結果、水蒸気の圧力は大気圧と等しくなるためです。

 

大気の圧力は、10m登ると約1hPa低下します。

山中湖あたりの高原は標高1000なので、100hPaも気圧は低下して、900Paになっています。

この圧力では、水の沸点は約3℃下がって、97℃になります。

因みに、富士山の山頂では、水の沸点は90℃です。

 

沸点が3℃下がっただけでも、お米のアルファ化にかかる時間は大幅にアップするので、普通の感覚で炊いたのでは、お米に芯ができてしまうわけです。

ですから、沸騰している時間を長くすれば良いのですが、通常の水の量では、そう簡単には行きません。

水の量を増やせばいいのですが、そうすると炊き上がったお米はべチャべチャになります。

 

一つの解決方法は、お米を蒸篭で蒸す方法です。

これならば、蒸気の温度は下がるのですが、時間をかけてもお米が必要以上に柔らかくはならないと思われます。

 

一度炊いたお米を、蒸し器で蒸しなおすのもいいかもしれません。

 

でも最近の炊飯器は、圧力もかかるようになっているので、これは要らないお世話かもしれません。

 

水は沸点が上がらないのですが、油は蒸気圧が低いので、気圧が低くても、高温にすることが出来て、料理に対して、あまり影響はありません。

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コメント

餅米は、良く蒸篭で蒸すようですけど、高原でおいしく蒸せますかね。

Covaさん

コメントありがとうございます。
餅米は、蒸す場合はかなり長く水につけておくようです。
高原で蒸す場合、蒸気の温度は低地より低いので、アルファ化させるためには、低地より長い時間蒸さなければならないと思います。

美味しくできるかどうかは、よくわかりません。

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