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2010年6月14日 (月)

原子の構造-3

 

原子は中心に非常に小さい原子核があり、その周りを電子が覆っています。

電子は、殻構造をしていて、内側からK殻、L殻、M殻、N殻、O殻…となっていることを、一つ前の記事『原子構造-2』で述べました。

KLM,...は、ボーアの量子条件における角運動量の倍数と対応しています。

 

すなわち、K殻では、古典的な電子の軌道の長さは、ド・ブロイ波長が1波長分になっています。

L殻では、軌道の長さが2波長分、等々となっていて、量子力学では、この整数は主量子数といっています。

 

量子数には、このほかに方位量子数、磁気量子数、スピン磁気量子数があります。

 

主量子数は、通常nと表記し、1,23...の値をとります。

 

方位量子数は、電子の軌道の方向(方位)に関係し、通常lと表記します。

方位量子数の値は、制限があり、0からn1までの値をとります。

0の場合は軌道は等方的になります。

 

磁気量子数は通常mと表記され、その値は、0から±lまでの値をとります。

 

スピン量子数は通常sと表示され、半整数で表され、正負の符号で、スピンの向きを示します。

 

方位量子数に対応する軌道は記号で表され、0はs軌道、1p軌道、2d軌道、3はf軌道と呼ばれています。

s軌道は、方位量子数が0なので、等方的で、軌道の分布は球状をしています。

 

K殻では、主量子数が1なので、方位量子数は、0のみを取ります。

したがって、自動的に磁気量子数も0となります。

このことは、軌道の状態は1つだけということになります。

この軌道のことを1s軌道といいます。

 

前の記事『原子の構造-2』で、K殻には電子が2個入ると述べました。

K殻は軌道がひとつだけなので、電子は1個だけしか入れないように見えますが、

実際には、正と負のスピンを持つ電子が入れるので、2個の電子まで可能になります。

正負のスピンとは、古典的には、軌道を右回りと左回りに回る電子と考えても良いと思います。

 

水素原子は電子が一つだけの原子です。

したがって、基底状態(通常の状態)ではK殻すなわち1s1個だけ電子が入っています。

 

この水素原子にエネルギーを与えて(例えば紫外線を当てるなどして)エネルギーの高い状態の原子(励起原子)にします。

このとき、水素原子の電子はL殻に持ち上げられたとします。

L殻の主量子数は2なので、方位量子数は01を取ることができ、磁気量子数は0と±1を取ることができます。

 

方位量子数0の軌道は2s、方位量子数1の軌道は2pです。2p軌道は磁気量子数が0と±1を取ることができるので、3つの軌道が可能になります。

この3つの軌道は磁場をかけなければ、エネルギー的に等しく、いわゆる縮退しているといわれます。(縮退という言葉は量子力学特有で、特に覚える必要はありません。エネルギーが等しいということです。)

 

水素原子の1s2s2p電子軌道の波動関数はシュレーディンガー方程式で正確に計算できます。

これを計算することで、水素原子の電子の存在確率(波動関数の絶対値の二乗は存在確率なので)を求めることが出来ます。

図は、原子の中心から距離(ボーア半径、0.053nmを単位にとっているので、1の位置がボーア半径の値です)の電子密度の存在確率を示したものです。

Photo

1s軌道の電子は、原子の中心で確率密度が高くなっています。

2s軌道の電子も、原子の中心で密度が高いのですが、さらにボーア半径の4倍の位置で再び極大を示しています。(途中から見やすくするために縦軸を10倍に拡大しています。)

 

2p軌道の電子は中心には存在せず、ボーア半径の2倍の位置で極大になっています。

 

水素原子の基底状態(いわゆる通常の状態)では、水素原子の半径の大きさは、ほぼボーア半径程度と思われます。

 

電子が中心からどの程度の距離まで存在するかは、中心からの密度だけでは分かりません。

 

s軌道の場合、中心からの距離が大きくなると、その距離の二乗に比例して、電子の存在する球面の面積が大きくなります。

したがって、中心からの距離に対する電子の存在確率は、密度に中心からの距離の二乗を掛ける必要があります。

 

下の図は、1s2s軌道について、電子密度に中心からの距離の二乗を掛けた値のグラフです。

 

Photo_2

基底状態の水素原子では、原子核からボーア半径の3倍までに、ほとんどの電子が含まれることが分かります。

 

ところが励起状態である2s軌道では、ボーア半径の2倍までには、ほとんど電子は存在せず、5倍の位置で最大になっています。ここでは示していませんが、ボーア半径のほぼ10倍程度まで電子は拡がっていることになります。

 

一方、2p軌道はs軌道のように等方的ではなく、下の図のように2つの球が連結した形になっています。

2p

 

 

図は、z方向に軌道が広がっている、磁気量子数が0の場合を示しています。

磁気量子数が±1の場合は、これに垂直なxy平面内にこのような軌道がお互いに直行して存在します。

球の中心付近が存在確率が高く、原子核からボーア半径のほぼ2倍の位置が球の中心になっています。

 

基底状態の水素原子ではK殻、すなわち1s軌道に1個の電子が入っていますが、

ヘリウム原子ではK殻に2個の電子、すなわち1s軌道が2個の電子で埋まった状態になっています。

このように、軌道に電子が入れる座席が全て埋まった状態は、安定で、化学反応性が小さい状態であることが実験からわかっています。

そのため、ヘリウムは不活性元素と呼ばれています。

 

電子を3個持つリチウム原子は、1s軌道に2個以上は入れないので、L殻にある2s軌道に1個の原子が入ります。

このように、電子が増えるにしたがって、2s軌道に2個、2p軌道の3つの軌道にそれぞれ2個ずつ、6個の電子が入ってゆきます。

1s2s2pが全て埋まった状態の原子は電子を10個持つネオン原子で、やはり不活性元素です。

2pまでが埋まると、3s3p3d軌道が埋まり始めます。3d軌道は5個の異なる(物理では“独立な”といいます)軌道が存在し、それぞれに2個ずつの電子が入るので、d軌道には10個の電子が入ります。

 

このように、電子は、波動関数であらわされた軌道の存在確率の範囲に分布するのです。

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