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2010年6月23日 (水)

太陽光の圧力で走る宇宙ヨット:イカロスはなぜ飛べるのか?

今年の521日に金星探査機とともに、宇宙ヨットのイカロスが打ち上げられた。

 

私がまだ名古屋大学の教師のころ、3年生のゼミで、太陽光で走る宇宙ヨットの設計をさせたことがある。

 

その時の計算で、かなり面白いことが分かった。

また、200kg程度の船体だと、巨大な帆が必要なことがわかったのです。

 

宇宙ヨットが帆だけで出来ているとする、最も簡単な場合から考えることにする。

 

宇宙ヨットが太陽から離れる方向に飛ぶには、太陽の引力に対抗して、飛ばなければならないわけです。

 

太陽の引力は、

 

太陽の引力=万有引力定数×太陽の質量×宇宙ヨットの質量÷太陽からの距離の二乗

     =太陽の引力の加速度×宇宙ヨットの質量

 

です。

 

宇宙ヨットが帆だけで出来ている場合は、宇宙ヨットの質量は、

 

宇宙ヨットの質量=帆の材料の密度(比重)×帆の面積×帆の厚さ

 

になります。

 

一方、太陽光の圧力による帆の受ける力は

 

太陽光による力=太陽光の圧力×帆の面積

 

になります。

 

太陽の引力よりも太陽光の力が大きくないと、ヨットは太陽から離れずに、太陽に引き寄せられてしまいます。

 

太陽の引力の影響を小さくするには、宇宙ヨットの質量を小さくしなくてはなりません。

 

一方、太陽光の力を大きくするには帆の面積を大きくしなくてはなりません。

ところが、宇宙ヨットの質量にも帆の面積が入っているので、太陽の引力と光の圧力の綱引きで、帆の面積は当面は関係ないことになります。

 

結局、帆の材料の密度と厚さを小さくすることで、太陽の引力に打ち勝つようにしなくてはならないのです。

 

帆の材料として、密度が小さく、強い材料として考えられるのはポリエチレンです。

密度は1立方センチメートル当り0.9グラム(0.9g/cm3=900kg/m3)です(理科年表による)。

 

ポリエチレンの帆の厚さは10ミクロン程度まで薄く出来ると思われます。

 

帆が効率的に働くには、光を十分に反射できるようにしなければなりませんが、

これは最近の技術で可能になっています。

 

さて、そこで、太陽からの引力の加速度を計算して見ましょう。

 

万有引力定数は6.672×1011m3/kgs2

太陽の質量は1.989×1030kg2×1030kg

太陽と地球の間の距離は1.5×1011

(理科年表による)

 

太陽の引力の加速度6.7×1011×2×1030/(1.5×1011)2 

    =6×103m/s2

 

と、非常に小さい値です。

 

太陽の光の圧力は、201068日の記事(観測と光の圧力:不確定性原理への導入)のところで、計算しました。

 

太陽の光の圧力=4.56×106Paです

この値は、実際に計算してみると波長にはよらないことが分かります。

 

ここで帆の面積を1m2とすると計算しやすくなります。(帆の面積には関係ないのでどのような値でも構いません)

 

1m2の帆で、太陽光の圧力による力は4.56×106Nになり、一方、太陽による引力は

6×103×帆の厚さ×900900は密度)になります。

90100としてもそれほど差はなく、その方が計算をしやすいので、

その場合、引力は6×帆の厚さとなります。

 

したがって、帆の厚さは106m0.001mm1ミクロン以下でなくてはならないことになります。

帆だけの場合でこの値になるということは結構厳しい条件です。

 

とにかく、これ以上厚い帆だと、どんなことをしても宇宙ヨットは太陽にひきつけられてしまうわけです。

 

したがって、船体をつけた場合でも、これよりも薄い帆が必要となるわけです。

 

有人の宇宙ヨットだと、最低でも200kgぐらいの質量が必要になります。

 

この場合、引力は

 

太陽の引力=6×103×(200+帆の面積×帆の厚さ×900

 

太陽の光の力=6×106×帆の面積

(6×106× 帆の面積としてもたいして違わないので、この後の計算を面倒にしないために4.56×106よりちょっと大きい値、6×106を使います。)

 

になります。

 

帆の厚さを1ミクロンにすると、どの程度の大きさの帆が必要になるでしょうか?

 

太陽の引力太陽の光の力

 

として計算してみましょう。帆の材料の密度はこの場合は正確に900kg/m3で計算します。

 

これを計算すると、帆の面積は2×106m2以上必要ということになります。

帆の大きさは一辺が1.4キロメートル以上の巨大なものになるわけです。

 

帆の厚さを0.5ミクロンにすれば、帆の面積は3.6×105m2以上必要となり、

この場合は、一辺が600メートルの帆で足りることになるわけです。

 

イカロスがどの程度の質量なのか分かりませんが、仮に10kg程度だとすると1ミクロンの厚さの帆で、帆の面積は105m2以上(一辺315以上)は必要になります。

また、1kgとすれば、一辺100m以上の帆ということになります。

 

厚さを0.5ミクロンにすればもう少し改善できて、10kgの船体で帆は一辺135m1kgならば、一辺が42m以上あれば、宇宙ヨットは太陽から離れることが出来ます。

 

宇宙なので、巨大な帆でも、特に邪魔にはなりません。


ところで、実際のイカロスは地球から発射されます。

その場合は、地球とほとんど同じスピードで太陽の周りを周回することになります。


この場合、太陽の引力と周回による遠心力が釣合うので、太陽の引力の影響は受けないことになります。

 

 

 

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