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2010年6月 9日 (水)

不確定性原理と観測の問題

 

光の圧力の影響は、電子のような小さい物体になると話が違ってきます。

電子の質量は9×1031kgなので、電子が1m/sの速さで動いていると、運動量は9×1031N·sとなります。

この値は、一つ前の記事で話題にした、0.66μmの波長の光子の運動量、1027N·sよりも約1000倍も小さいことになります。

 

すなわち、可視光を当てて電子を見ようとすると、電子は跳ね飛ばされて何処に行ったか分からなくなり、電子が元々持っていた運動量を測定しようとしても分からなくなってしまいます。

電子の運動量を測るだけならば、波長のもっと長い光、すなわち電磁波を使えばいいことになります。波長が1mの電磁波なら、光子の運動量は十分に小さくなります。

 

次に、電子の位置を調べるのにも、光を使いましょう。

光で物を見る場合、光の波長分だけ、物体はボケて見えているということが分かっています。

これは、光が波なので、物体の端で散乱された光と、その近くを通過した光が干渉して、端の近くにボケた輪郭を作るためです。

これは反射で物を見るときでも同じで、端で反射した波と、少し中で反射した波の干渉でボケます。

このボケは、波の重なりで起きるために、ほぼ、波長分のボケが生じるのです。

 

したがって、電子のように小さな物体を見るためには、非常に短い波長の光が必要になってきます。

しかし、前にも述べたように、波長が短くなると運動量が大きくなって、運動量を測ることは出来なくなります。

 

ですから、位置を正確に測ろうと思うと波長を短くしなくてはならず、その結果、運動量のボケは非常に大きくなります。

一方、運動量を正確に測ろうとすると、波長を長くしなくてはならず、その結果、位置のボケが大きくなってしまうのです。

 

物体の運動量のボケは、当てる光の運動量程度になるのです。

一方、物体の位置のボケは、当てる光の波長程度になります。

 

運動量のボケは、光の運動量なので、

運動量のボケ=プランク定数÷光の波長

位置のボケは、光の波長程度なので、

位置のボケ=光の波長

 

そこで、運動量のボケ×位置のボケを作ってみると

 

運動量のボケ×位置のボケ=プランク定数÷光の波長×光の波長

 

となって、光の波長が消去されて、

 

運動量のボケ×位置のボケ=プランク定数

 

となります。

 

運動量のボケをΔp、位置のボケをΔxプランク定数をh とすると

 

ΔpΔx=h

 

ハイゼンベルクの不確定性原理の結果は、

ΔpΔxh

となっていて、等号が不等号になっているだけで、本質的には同じです。

 

不確定性原理では、位置を正確に測ろうとすると、運動量の値は不正確になり、

運動量を正確に測ろうとすると、位置が不正確になるというものです。

 

結局、電子のように軽く、小さな物体の運動を観測しようとすると、位置と、運動量のどちらかが不正確になってしまい、正確な運動の状態がわからなくなるということになったのです。

 

このことは、観測をすることで、先が読めなくなる、すなわち、今まで考えられていたような、古典的な因果律が成り立たなくなるわけで、物理学の破綻を意味するものでもあったわけです。

 

物理学で重要な観測の問題が、それをすることによって、予測が立たなくなるということは、大問題でした。

 

この問題は、多くの物理学者を巻き込んだ、大論争に発展しました。

また、今でも、時折、思い出したように、議論されていますが、最近の新しい実験で、決着に向かっているようにも見えます。

 

この論争における、二つのスリットを通る電子の干渉の問題は有名です。

 

この話は、また次にしましょう。

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