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2010年6月19日 (土)

なぜ分子が出来るのか?

 

水素や酸素、窒素などは、原子でいるよりも2個の原子が結合した分子の状態になりやすい。

 

なぜ、原子が1個でいるよりも、分子になった方が安定なのでしょうか?

 

一方で、ヘリウムやネオンなどの不活性気体は原子1個の状態で存在します。

 

この違いはなぜなのでしょうか?

 

まずは、水素原子について考えて見ます。

水素原子は、1s軌道に1個の電子を持っています。(一つ前の記事『原子の構造-3』参照)

1s軌道は2個の電子が入れる席があるので、もう1個の電子がその席に入って、負(マイナス)のイオンになることも可能です。

(水素原子に電子が一つ増えるので、負のイオンになります。)

 

水素原子(水素原子Aとしましょう)にもう一つの水素原子(水素原子Bとします)が近づいてきたとしましょう。

水素の原子核である陽子の周りには1個の電子が球状に雲のように囲んでいます。

近づいてきた、水素原子Bと水素原子Aが接触すると、水素原子Bの電子は、何かの拍子に、水素原子A1s軌道の空いている席に入ってしまいます。

このとき、水素原子Aは負のイオンになり、一方電子を取られてしまった水素原子Bは陽子だけなので、正(プラス)のイオンになります。

 

正のイオンと負のイオンの間には強い引力が生じるので、水素原子(水素イオン)Bの陽子は水素原子(水素イオン)Aの中に入り込みます。

このとき、水素イオンB1s軌道はがらがらに空いているので、水素イオンA2個の電子のうちの1個が水素イオンB1s軌道に入り込みます。

 

このとき、再び2個の水素原子に戻りそうなものです。

 

しかし、両方の原子核(陽子)は近づきすぎているので、両方の原子の1s軌道を電子は行ったりきたりします。

既にこのときには、電子の見分けがつかなくなっているうえ、1s軌道は同等なので、2個の電子は自由に両方の軌道を行き来することになります。

 

このために、水素原子ABは分かれることが出来ずに分子になってしまうのです。

 

ヘリウム原子の場合は、1s軌道に電子が2個入っているので、1s軌道に空いている席はありません。

もう一個の電子が入ろうとすると2s軌道か2p軌道に入るしかないのです。

すなわち、レストランで1階の席はもう埋まってしまって、2階の席しかないという状態です。

 

ヘリウム原子ABが接触して、たまたまヘリウム原子A2s軌道にBの電子が入ったとしましょう。

このとき、ヘリウム原子Aは負のイオンになり、Bは正のイオンになります。

正のヘリウムイオンBが負のヘリウムイオンAに入り込もうとすると、Bに残っている1s軌道の電子が邪魔をして、1s軌道の半径以上には入り込めません。

一方、ヘリウムイオンA2s軌道に入った電子はエネルギー的に不安定なので、接触しているヘリウムイオンB1s軌道に戻りたいと思います。

結局、ヘリウムイオンA2s軌道の電子はB1s軌道にすぐに戻ってしまいます。

 

このとき、二つのイオンの間の距離は、接触している原子間の距離と同じなので、原子間の結合は出来ずに、二つの原子は離れていってしまいます。

 

結局、ヘリウム原子2個で出来るヘリウム分子は出来ないのです。

 

では、水素原子にヘリウム原子が近づいたらどうでしょうか?

水素原子の1s軌道は席が一個空いているので、ヘリウム原子が接触すれば、2個の1s電子の1個が水素原子に移り、水素原子は負の水素イオンになり、ヘリウムは正のヘリウムイオンになります。

したがって、ヘリウムイオンは水素イオンの中に入り込もうとしますが、残った1s電子が邪魔になって、近づけません。

そのうちに、水素イオンの1s電子の1個は、ヘリウムの軌道にいた方が居心地が良いので、ヘリウムの方に移ってしまいます。

 

この場合も、二つのイオン間の距離は、接触している原子間距離と同じなので、結合は出来ずに、お互いに離れていってしまいます。

 

このようにヘリウムは他の原子との化学反応が起きないために、不活性元素と呼ばれています。

 

窒素分子や酸素分子も、水素分子と同じように考えられます。

窒素原子は2s軌道までは電子が詰まっていますが、2p軌道には3個の電子があります。

酸素原子は、2p軌道に4個の電子があります。

2p軌道には電子の席は6個あるので、どちらの原子も、2p軌道に、まだ席の空きがあります。

ですから、原子同士が接触すると電子のやり取りが起って、分子になるのです。

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コメント

「正のヘリウムイオンBが負のヘリウムイオンBに入り込もうとすると、Bに残っている1s軌道の電子が邪魔をして、1s軌道の半径以上には入り込めません」の
負のヘリウムイオンBはAの誤りでしょうか。
自分の理解がギリギリなので よくわかりません。

また 1s軌道の半径以上には入り込めない この様子がイメージできません。正イオンBの1s軌道ですよね。
よくわから何ので さらに教えていただければ助かります。
大変興味のある話で 何とか理解したいところです。

槇野泰夫さま

コメントありがとうございます。「負のヘリウムイオンB」はAの誤りです。早速記事は修正いたしました。
ご質問の、正イオンBの1s軌道が邪魔をしてAの1s軌道の半径より中に入り込めないという理由ですが、これはパウリに排他原理によるものです。Aの1s軌道には既に2個の電子が入っていて、この軌道にはそれ以上電子が入り込める場所がありません。Bには1s軌道に電子が残っているために、Bの1s軌道とAの1s軌道は重なることが出来ないのです。重なるためにはAの1s軌道に3個の電子がひることが出来るか、あるいはBの1s軌道にAの1s軌道の電子が移って、Bの1sに3個の電子が入らなければ重なることが出来ないのです。1sには上向きのスピンと下向きのスピンの電子2個しか入れませんので、1s電子が残っているBの1s軌道はAの1s軌道には近づくことが出来ないのです。

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