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2010年6月29日 (火)

太陽からのエネルギーと地球の温度

 

大気圏外から見た地球の温度はどのくらいなのでしょうか?

地球に入ってくる太陽からのエネルギーと地球から放出される輻射のエネルギーの釣合いで分かるはずです。

 

太陽からの輻射のエネルギーは、シュテファンの法則、輻射のエネルギーは絶対温度の4乗に比例するという法則で計算できます。

すなわち、

 

1秒間に太陽の放出する総エネルギー(放出エネルギー率)=シュテファン・ボルツマン定数×太陽の表面積×温度の4乗ワット

 

です。

 

太陽の表面積は半径が6.96×108mなので、

4×3.14×半径の2乗=4×3.14×6.962×1016m26.08×1018m2

になります。

 

太陽の温度は5780K5.78×103K(理科年表による)、

ステファン・ボルツマン定数は5.67×108Wm-2K-4なので、

 

総エネルギー放出率

5.67×108×6.08×1018×5.784×10123.85×104×108×1018×1012

3.85×1026W

 

となって、当然ですが、理科年表に載っている値と一致します。

 

太陽から地球に入るエネルギーと地球から宇宙に放出されるエネルギーが等しければ、地球の温度は一定で、安定していることになります。

 

地球の大気圏外で、1平方メートル当たりに入ってくる太陽エネルギーは太陽定数と呼ばれています。

この値は、1.37W/m2ですが、これも、総エネルギー放出率から次のように計算できます。

 

太陽のエネルギーが地球に届く時、そのエネルギーは太陽と地球の距離1.5×1011mを半径とする球面上に一様に到達します。

したがって、地球上の1平方メートルに到達するエネルギーは、総エネルギーをその球面の面積で割った値になります。

球面の面積は4×3.14×距離の2乗なので、計算すると2.83×1023m2になります。

 

総エネルギー放出率÷球面の面積=1.36×103W/m21.36W/m2

 

となって、近似の多い計算にしては、良く一致しています。

 

地球が受ける太陽エネルギーの総量は上の値に地球の断面積をかければ良いわけです。

 

断面積は3.14×半径の2乗=3.14×赤道の長さの二乗÷4÷3.14の二乗です。

円周率3.14の二乗はほとんど10赤道の長さは4千万メートル=4×107mなので、

断面積は、簡単に計算機を使わなくても計算できて、1.26×1014m2になります。

 

したがって、太陽定数をこの面積にかければ、1.72×1017Wのエネルギーが流入することがわかります。

 

この値をシュテファン・ボルツマン定数と地球の表面積で割って、4乗根を取れば地球の温度が分かります。

 

地球の表面積4×3.14×地球の半径の2乗=断面積の4

 

ということは、太陽定数を4で割って、さらにシュテファン・ボルツマン定数で割った値の4乗根ということになります。

 

結果は279K6℃)!

ちょっと寒い程度。

これはかなり尤もらしい値になりました。

(実は以前の値は計算間違いで読者のお一人からご指摘があり、修正しました。)

 

ところで、読者のお一人からご指摘があり、国連の環境部会が編纂した気候変動に関するレポート、Climate Change 2007 (Cambridge University Press 2007) の中の、Historical Overview of Climate Change Science の章の最後の項にあるFrequently Asked Question 1.1によると、太陽エネルギーは、地球表面の雲や氷等による反射で30%が反射され、70%が吸収されるとのことで、これを考慮すると

 

地球の温度=(太陽定数×0.7÷4÷シュテファン・ボルツマン定数)の4乗根

     =(1370×0.7÷4÷(5.67×108))の4乗根

になりますので、

 

結果は255K(-18℃)となります

 

 

これは地球の気候からすると、かなり低い値ですが、上空の温度としては理解できる値でもあります。一方で、この値が地表での温度と考えると低すぎるようにも思えます。

 

ただ、この温度は、地球が太陽からのエネルギーのみで温度を維持していると仮定した場合で、地球の持つ温度を考えていません。地表の温度は平均287K14℃:上記の文献による)なので、もし空気がなければ、輻射で失うエネルギーは1.92×1017Wとなり、太陽から受け取るエネルギー(70%とすると1.2×1017W)よりも大きくなるので、地球はだんだん冷えてゆきます。

 

そこで、地表から熱伝導で失われる熱量が気になります。

 

空気の層が平均で3000m、空気の熱伝導率が0.025W/mK200931日の記事『廊下は生活の知恵?』参照)、上空の温度が255K(-19℃)とすると逃げ出す熱量が1.2×1017Wに近い値になるのでしょうか?

 

地球の表面積は1.26×1014m24倍して、5×1014m2なので、計算しなくても熱伝導で失われる熱量は非常に小さいということがわかります。

 

一応計算すると、熱伝導だけで逃げ出す熱量は

 

0.025×5×1014×(287255)÷30001.3×1011W

 

とほとんど6桁以上も小さい値になっています。

 

一方287Kの地表と255Kの上空の温度差により輻射で逃げ出す熱量は

 

5×1014×5.67×108×(28742554)=7.2×1016W

 

です。上空から宇宙に放出される熱量は、太陽から流入するエネルギー1.72×1017W70%で釣合い、1.2×1017Wとなりますので、地表から輻射で逃げる熱量は、この約60%程度です。

 

対流によるエネルギー移動がどの程度かはわかりませんが、結局、空気の布団で地球のエネルギー状態はほとんどバランスしていると思っていいのかもしれません。

 

ところで、ついでにCO2は温暖化ガスといわれています。

熱伝導率は、空気よりも約4割低い値なので、逃げる熱量が少なくなり、その分、地表に熱がたまるので、そういわれているのかもしれません。

 

熱伝導による熱の流出が無視できるほど小さいとすると、地表から大気圏外に運び出されている熱は、ほとんどが輻射と空気の対流に依って、暖かい空気が上層に運ばれて放出されていると思ったほうが良さそうです。

 

空気がないと、地球のエネルギーはどんどん失われて、最終的には地表の温度は255K(-18℃)まで下がってしまいます。

 

空気の布団で、地球上の生活圏は過ごしやすくなっているようです。


 

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コメント

スゴイ細かくてイイブログですねhappy02good

尊敬しちゃいますhappy01up

A子さん、

コメントありがとうございます。
これからもよろしく。

申し訳ありません。

仕事でステファンボルツマン定数の計算をやってみる必要があるのですが、うまく出来なくて困っています。

公式では 5.67×10^-8(W/m^-2・K^4)となっておりますが
この数式の中のWはどこから導くのでしょうか?
またm^-2のmはメートルとのことですが、それはどこから導くのでしょうか・・・?

質問の内容がおかしいかもしれませんが、どうぞご教授いただければ幸いです。

計算したいのは農業用のハウスの骨材から出る輻射熱の量です。
骨材の温度が40℃、骨材の総面積が1000㎡で計算したいと思っております。

おしえてくださいさま

コメントありがとうございます。インターネットにアクセスできない環境に出張していたために返事が遅れました。

シュテファン・ボルツマン定数の()内は単位ですが、ここのW(ワット)は輻射熱による熱の流出量がWの単位になっているためです。またメートルの二乗は、シュテファンの公式で得られる輻射熱量が1平方メートル当たりの量になっているためです。
したがって、農業用のハウスの骨材の輻射熱の量は、
シュテファン・ボルツマン定数と温度を絶対温度、40℃であれば、これに273℃を加えて、313Kとして、これを4乗して
シュテファン・ボルツマン定数をかけて、骨材の面積1000平方メートルをかけると、544kW(キロワット)の輻射熱になります。Wは1秒当たりのエネルギーです。1Wは1秒当たり1J(ジュール)の熱量を表します。

なお、313Kの4乗は9.6×10^9K^4になります。

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