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2010年6月13日 (日)

粒子と波の二重性と観測の問題(確率波)

ド・ブロイの粒子と波の二重性に基づいて、シュレーディンガーは波動方程式を1926年に発表しました。

シュレーディンガーの方程式の解は、波動関数という形で現れます。

 

波動関数自体には実体はなく、その絶対値の二乗が、観測にかかる量になってきます。

ここには、観測によって、波の性質がなくなっていることを暗に示しています。

 

観測の不確定性原理は、波動関数の性質とも密接に関わっています。

 

これに関して起きた論争は以下のようなものです。

 

光を2本のスリットを通して観測すると、光の波の干渉によって縞模様がスクリーンに映し出される、ヤングの実験はよく知られています。

 

同じことを電子で実験したとします。

現在、最先端の技術によってこの実験は行うことが出来ます。

 

そこで、次のような実験をします。

㈱日立製作所基礎研究所のフェロー、外村彰博士による見事な実験が

以下のサイトの動画の735秒から見ることが出来ます。

 

http://www.film.hitachi.jp/movie/movie792.html

 

電子を1個ずつ出して、2つのスリットのどちらかを通します。

電子はどちらかのスリットを通るので、干渉は起きないと思われます。

1個の電子がスクリーンに到達してから、次の電子を発射します。

これを繰り返して10000個以上の電子をスクリーンに到達させると、

干渉縞が見えます。これは上の動画で見ることが出来ます。

 

ということは、1個の電子も波なのでしょうか?

 

この実験が行われる遥か以前、1920年代に、このような実験を考えて、大論争が繰り広げられたのです。

 

ここで起きた論争は、もし、電子がどちらか一方のスリットを通ったことが分かったら、

干渉縞は見えないのかどうかということでした。

 

すなわち、まず、1個の電子が通る時に、一方のスリットを塞いで、もう一方のスリットだけを電子が通れるようにします。

こうすることで、電子がどちらのスリットを通ったか分かります。

次に、発射された電子に対しては、塞いであったスリットを開け、もう一方を塞ぎます。

これを繰り返して、両方のスリットが交互に同じ時間だけ開いていた場合を考えます。

 

これは半分の時間、一方のスリットだけを開け、後半の時間を、別のスリットだけ開けた場合と同じになるはずです。

(すなわち、同時に開いていなければ、何時開けたかということには関係ないはずです。)

 

光の場合には、この実験では、干渉縞が見えないことは分かっています。

 

電子の場合でも、外村博士の実験で、このことは、光と同様に、干渉縞は見えず、二つのスリットを別々に通った波の強度の足し合わせになりました。

 

このように、電子も光子もどちらかのスリットを通ったことが分かった場合は、干渉縞は見えないということなのです。

 

では、電子の場合、なぜ干渉縞が見えるのでしょうか?

 

論争の中心となった論点は、電子は粒子なので、2個のスリットを通る場合に、2つに割れるということは考えられないということです。

 

そこで考えられたことは、電子はどちらかのスリットを通ったか分からない場合には、

干渉縞が出る。

電子が一方のスリットを通ったことを、観測によって知ってしまうと、

それによって乱されて、干渉縞は見えなくなる。

 

実際に、不確定性原理によれば、スリットの間隔分だけ、位置の不確定性があるので、

これによる、運動量の不確定は、プランク定数÷スリット間隔 となり、

その分だけ、電子は右、左に振られると考えると、スクリーン上の干渉縞の間隔を説明することが出来ます。

 

このことは、物質波は確率の波であるという考えに進みました。

 

シュレーディンガーの波動関数は、確率波の波動関数という解釈に進んだのですが、

この解釈について、更に大論争となったわけです。

 

古典物理学では、方程式に現れる量は、どれも実在し、観測可能な量ですが、

波動関数は観測にかかる実在ではなく、上にも書いたように、その絶対値の二乗が実在になります。

 

1926年にマックス・ボルン(Max Born)は波動関数の絶対値の二乗が、粒子がそこにある確率に比例すると解釈しました。

 

すなわち、波動関数は観測によって収縮して粒子として振る舞いスリットのどちらを通ったか分かる。

観測しなければ、波動関数は拡がって、スリットのどちらを通ったか分からない。

 

このことを確率で論じたのが、ニールス・ボーアを中心とするコペンハーゲン学派の解釈でした。

 

この解釈には、シュレーディンガーやアインシュタインが強く反発しました。

すなわち、力学に、確率という概念を導入することに反発する人達がいたわけです。

このことは「神様はさいころを振らない」というアインシュタインの有名な言葉や、

「シュレーディンガーの猫」に代表される問題提起で有名です。

 

しかし、一方で、このコペンハーゲン学派の解釈を受け入れる人達も多く、シュレーディンガー方程式を使った研究は次々と新しい問題を現代でも解決しています。

 

外村博士の実験で、電子は明らかに粒子として、スクリーンのある一点に到達しています。

次の電子が何処に来るかは分からないので、最初のうちは、縞模様が見えず、一面に電子が到達しています。

しかし電子の数が増えてくると、次第に縞模様が現れます。

 

このことは、電子の数が増えると、スクリーン上に縞模様が出来て、統計的に波の性質が見えてくることになります。

 

すなわち、電子の波は確率波であることがはっきりしたわけです

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コメント

はじめまして。
確率波とはどんなものでしょうか?

二重スリットの干渉縞は確率波の重ね合わせた結果
だとよく聞きますが、確率というと思い浮かぶのは
正規分布。右のスリットの正規分布と左のスリットの
正規分布の重ね合わせ?と連想しましたが、それでは
縞模様はあんなに沢山できそうにありません。やはり
正規分布ではなく何かの波の重ね合わせ?
 それが確率の波?
しかし波というからは周波数があるのでしょうか?

zanki様

コメントありがとうございます。
確率波とは、確率の波ではなく、波動関数の絶対値の二乗が観測にかかる対象で、その値が、その波(あるいは粒子)の存在確率を表しているからなのです。その存在確率が波の性質を持っているために確率波といわれています。

また、波ですので周波数をもっています。
その値は、粒子の運動エネルギーをプランク定数で割った値になります。

上の返事で書き忘れましたが、
確率波は存在確率が波の性質を持っていると書きました。
その存在確率波正規分布を持っていると思っていいと思います。ただ、その分布の幅は運動量の不確定によって大きくも小さくもなります。運動量の不確定が非常に小さい場合は、幅は非常に広く、スリットによる干渉縞が沢山出ることになります。

レスありがとうございます。
正規曲線は関係ありそうだとは思っていましたが、
正規曲線は山だけしかなく、谷がないし、
横にいくつもつなげてみても、波の形とは違うよう
に思います。やはり確率の波がよくイメージでき
ません。

zanki様

レスが遅くてすみません。

正規曲線は波形ではなくて、波全体の形です。
通常、光の場合でも、波の振幅を二乗したものが強度として観測されますが、
確率波も、振幅を二乗した強度の分布が正規分布になっているわけです。
この分布の形は、不確定性原理に依っていて、粒子の入る確率がその正規分布の中にあると考えるわけです。

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